土地賃貸借契約書がないがそれでも売却は可能か

50年間以上も借地の状態である場合、土地賃貸借契約書が締結されていないケースも少なくありません。賃貸借契約書がないという理由だけで、借地権が存在しないことにはなりません。旧借地借家法における借地権は建物の所有を目的としていますので、登記されている建物があり、地主と取り決めをした地代を支払い続けていれば、土地賃貸借契約書がなくても借地権が存在していると考えて良いでしょう。

しかし、その借地権を第三者に売却するとなると、事情は異なります。新しい借地権者は地主から借地権者として認めてもらう証しを要求し、それが土地賃貸借契約書になります。従って、もし土地賃貸借契約書が締結されていない状態で借地権を第三者に売却したい場合には、地主に事情を説明し、地主と土地賃貸借契約書を締結することをお勧めいたします。もしくは新しい借地権者に変わる際に、土地賃貸借契約書を締結できるように段取りすべきです。以下に土地賃貸借契約書のチェックポイントを記します。

(1) 土地の使用目的

借地権は建物の所有を目的として他人の土地を利用する権利です。その建物の種類が堅固建物か非堅固建物か、また借地権者の居住目的なのか、建物を他者に賃貸するのかを明記しておくことが肝要です。

(2) 賃貸借期間

前借地権者から借地権付建物を購入する場合には、前借地権者の賃貸借期間を引き継ぐのか、地主との間に新たに賃貸借期間を設定するのかの2通りがあります。前者の場合には注意を要します。例えば残存期間が8年程度だと、8年後に更新料の支払いが到来してしまいます。よく建物の法定耐用年数の残存期間と借地契約の残存期間を取り違えている人がいます。例えば前者が10年で後者が4年というような場合は、建物がまだまだ使用できる状態にあったとしても4年後には更新の時期を迎えてしまいます。

(3) 更新の際の記述

賃貸借期間が満了し、更新時期を迎えた際に更新料の計算をどのように行うのかの記述があったほうが良いでしょう。更新の考え方については、当サイトの契約期間満了における更新を、更新料に関しては更新料等の各種の支払金の目安をご覧ください。

(4) 地主の承諾事項

賃貸借期間に地主との間でトラブルになる可能性がある事項として、建物の用途変更、建物の増改築・建て替え、借地権の第三者への譲渡・転貸が挙げられます。通常、これらの事項は地主の承諾を要します。可能ならば承諾料の有無及び承諾料の算出方法等も土地賃貸借契約書に記述しておいたほうが良いでしょう。

(5) 契約の解除及び損害金

通常、借地権者が地代を一定期間滞納する、もしくは破産等をした場合には、地主は手続きを経て、土地賃貸借契約を解除することを要求します。また契約解除による明け渡しにおいて使用損害金が要求され、地代の滞納においては遅延損害金が要求されます。いずれの場合も賃貸借契約書に金額や金利を明示したほうが良いでしょう。

(6) 当事者変更と特定

長い賃貸借期間においては、地主及び借地権者の双方に相続が発生することがあります。相続発生後には地主及び借地権者は名義を書き換えて契約書を作成することになります。この場合、賃貸借期間を始めとする契約の諸条件は旧契約書を引き継ぐことが一般的です。借地権者の名義が相続によって相続人に変わった場合には、通常は名義変更料を支払う必要がありませんが、中には要求してくる地主もいます。可能ならば契約書にその旨を記述したほうが良いでしょう。 また親から子の贈与によって借地権者の名義が変わるような場合には、たとえ親族への名義変更であっても、名義変更料を支払うケースが多いと思われますので、認識しておいたほうが良いでしょう。

土地賃貸借契約の締結等の交渉は借地権者自らが行うとスムーズにいかないことが少なくありません。経験が豊富な専門の不動産会社に交渉を委任されることをお勧めいたします。

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