裁判案件の借地権を地主に買戻していただくことに成功

【時期】
令和2年3月
【分類】
借地権の売買
【場所】
都内S区
【内容】
 両親から借地権付建物を3件相続した方(A様)から連絡がありました。A様は4年前に当サイトをご覧いただき、当方の仲介により、3件のうちのうちの1件である老朽化した借地権付アパートを売却しました。そのアパートの買い手も当サイトをご覧いただいた方でした。
 上記の処分と同時期にA様が相続した他の借地権付建物のうちの一つが地主とトラブルになり、当方の提携先の弁護士を紹介しました。地主から土地明け渡し訴訟を起こされましたが、借地権は存続し、20年間の賃貸借契約を締結することができました。その借地権付建物には入居者がおり、安定的に賃料収入が入っています。
 A様は定年退職をされ、年金収入と家賃収入で生活をしています。裁判で和解が成立し、ほっと一息つく間もなく、病気が発症してしまいました。A様は外国人の奥様との2人家族で、奥様は日本語によるコミュケーションに不安を抱えています。
 そこでA様は自身に万が一の事態が発生した際のことを考慮し、相続税シミュレーションを当方に依頼されました。当該物件のほかに、両親が暮らしていた借地権付建物と自身の住まい及びアパートがありました。ある程度の現金がありましたので、相続税納税には問題がないことがわかりました。しかし、借地権を奥様に残してしまうと、地主や入居者との折衝が果たしてスムーズに行えるのかという疑問がわき、A様は当該物件と両親が暮らしていた借地権付建物の売却を決断されました。
 当該物件は借地権の収益物件です。スルガ銀行による融資改竄事件以来、収益物件まして借地権に対する金融機関による融資が難しい状況です。収益物件を専門に扱っている不動産会社に確認し、第三者に売却した場合の想定価格を把握しました。
 次に当該物件の土地(底地)の管理会社と折衝し、地主が買い取る可能性とその買い取り価格を確認いたしました。地主は相続後も貸地を50件以上も保有しており、相続税を延納しているそうですが、借地権の買い取りは行っており、買い取りの基準価格は路線価による借地権価格の55%との説明を受けました。あとは建物価格をどう見るかです。当該物件は築15年を経過していますが、月額賃料が23万円あります。地主側は固定資産税評価額を希望しましたが、当方は現賃料が得られている点をアピールし、固定資産税評価額の1.5倍の金額で折り合いました。
 借地権を第三者に売却する場合には、地主に譲渡承諾料とローン設定承諾料(融資を利用する場合)の支払いが必要になります。当該物件の場合には、賃貸借契約書にそれらの基準が明記されており、第三者への売却想定価格からそれらの承諾料を差し引いた金額と、地主の買い取り希望価格がほぼ同額水準となりました。
 A様にそのことを説明し、地主への売却を決断していただきました。売買契約は一括契約で、売主と買主が一同に会しました。4年前は裁判をする関係でしたが、この日は何のわだかまりもなく、満面の笑顔で契約決済を終えることができました。A様からは、肩の荷が半分下りたとの連絡をいただき、当方もほっと一息つきました。
 お話をいただいてから2年近くもかかった案件ですが、裁判を行うような間柄でも、諦めずに対話を継続することで問題解決ができることを認識できました。
 借地権者の皆様も、地主との関係が良好でない場合でも諦めずに交渉を継続されることをお勧めいたします。

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