複数の借地権が存在する底地の一括売却と借地権者の底地購入を同時に処理

【時期】
令和5年10月
【分類】
借地権の売買
【場所】
都内S区
【内容】
 今から6年前に相続人が24名に膨らんでしまった借地権者から相談がありました。底地保有者(地主)と交渉し、借地権と底地を同時に第三者(マンションデベロッパー)に売却することに成功しました。本年に入り、底地保有者から残りの底地を売却したいとの連絡をいただきました。底地には5名の借地権者が存在していました。地主は当該地から数十Km離れた場所に居住していることと、自身が来年に傘寿を迎えることで、今後の管理が難しくなることを想定して、売却を決断したそうです。

 複数の借地権者が存在する底地を購入する会社は、「底地買い業者」と呼ばれることが多いです。彼らの購入価格は路線価評価(路線価×面積×(1-借地権割合))よりも低くなることが一般的です。彼らが底地を購入した後に、底地を処理する方法には主に以下の4つがあります。①底地を借地権者に購入してもらう、②借地権を購入する、③底地と借地権を第三者に売却する、④底地と借地権を交換する 

このいずれかの手法が採用できれば底地買い業者は換金化に成功します。時と場合によりますが、1年以内に換金化できる率は3分の1,1年超5年以内に換金化できる率は3分の1,残りの3分の1は5年超になることが多いそうです。したがって、彼らが底地を購入する場合の価格は、路線価評価額の2分の1程度~路線価評価額が一般的となります。路線価と時価の乖離が大きい場所ほど路線価評価に近づく(場合によっては上回る)ことになります。

 当該地の地主に上記を説明したところ、相続税評価額以上で売却したいとのことでしたので、当方は借地権者5名と接触を重ねました。その結果、購入できる可能性があるのは2名であることが判明し、その旨を地主に報告しました。地主は、処理できない底地が残ってしまうことを懸念し、底地を一括して売却するとの判断をくだしました。しかし、相続税評価額以上で、できるだけ公示化水準に近い価格での売却という要望でした。

 このハードルをクリアするために、購入希望の1名の借地権者K様に、地続きの借地権(敷地延長地で間口2mの再建不可)も購入していただくことを交渉しました。それがOKとなり、もう1名の借地権者からも底地の購入申込書をいただきました。これらの状況を底地買い業者に示し、買い取り価格を地主の要望価格に引き上げることができました。底地買い業者は地主から底地を購入すると同時に、K様に底地を売却できることを条件にGOサインを出したのです。

 手付の売買契約をした後に、底地を借地権毎に分筆完了し、所有権移転登記の日を迎えました。K様は融資を利用して底地を購入しますが、その金融機関で決済が実行されました。底地の一部は地主からK様に直接登記する(中間省略登記)という複雑な手法を採用するため、司法書士が2名参加し、1時間の時間を要してようやく決済を終了することができました。

 K様の父は手先の大変器用な方で、金融機関のロビーに自身が制作した陶器を飾っていました。それを地主にプレゼントしたところ、地主は大変喜ぶと同時に区切りをつけることができたことによる安堵の表情を見せました。また、K様は地続きの借地権からの地代収入を融資返済の一部に充当し、ゆくゆくは敷地全体の有効活用を目指したいとの希望を持っており、当方が引き続きアドバイスを行うことになりました。

 本事例は借地権者から依頼を受けて地主と知り合い、6年後にその底地を処理するという結果となりました。現在は購入希望の残り1名の処理を継続しており、終了した暁に、当HPで紹介する予定です。借地権や底地の処理は短期間では終わらず、ある程度の期間が必要であることを再認識させられた事例でした。

 

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