高齢者施設に入居し、空家となっていた借地権を底地と同時に第三者に売却

【時期】
令和5年12月
【分類】
借地権の売買
【場所】
都内K区
【内容】
 夏前に当サイトに相談予約がありました。姉妹2名が来所されました。不思議なことですが、最近は女性からの相談が多いです。70代で単身で暮らしていた母が高齢者施設に入居し、実家が空き家になっているとのことです。相談者の祖父の代から土地を借りており、60年以上になるとのこと。場所は都内K区で、偶然ですが当社の代表者の自宅から徒歩15分程度に存在し、土地勘のあるエリアです。最寄り駅から10分程度の住宅地にあり、大変住みやすい場所です。

 地主のF様は地元では知らない人はいないほど有名なK一族の女性で、90歳近くになります。始期からの土地の賃貸借契約書と更新の記録を拝見しました。地代は坪500円台と低廉で、更新料も相場よりも低い水準で、直近は更新料の請求もなかったとのことです。借地の面積は35坪で、建物は築年不詳で、謄本には表題部のみ平屋建ての10坪と記載されています。現況の建物は増改築を重ねており、40坪強の2階建となっています。

 相談者は、使用しなくなった空き家の処理(換金化)を希望しています。建物が使用できる状態の場合には、そのまま使用する第三者に譲渡できる可能性がありますが、築年数が60年以上経過していますので、その可能性は皆無と思われます。そうなりますと、処理方法は以下が考えられます。①借地権を地主に買い取ってもらう②借地権を第三者に売却する③底地と借地権を同時に第三者に売却する④底地を地主から購入した後に、所有権として第三者に売却する⑤借地権と底地を交換して、所有権となった土地を第三者に売却する

 当該地は変形敷地のため、⑤の可能性はないと判断しました。②の場合の譲渡先は、戸建て業者やアパート業者が考えられますが、地主の意向により選択肢が限定されることになります。その後、当社が文案を作成し、相談者のO様からF様あてにお手紙を投函していただきました。手紙を到着する頃合いを見計らって、F様にお電話をしてアポイントを取り、面談をすることになりました。

 F様はマンションで一人住まいをされており、元気なご様子でした。当方が説明をすると、内容を理解していただきました。当該借地権は一筆の土地の上にありますが、他にもう一つの借地権があります。当該借地権を単独で処理した場合には、他に借地権が残ってしまう状態になりますので、一筆の土地全体を売却したい旨の発言をされました。ちょうど、その時、F様に電話がありました。親戚(姪)からの電話で、当方が代わって内容をお聞きしました。F様と任意後見契約を締結しているF様の甥が交渉の窓口になるとのことでした。

 F様とお会いした2週間後に、F様宅で甥と当該借地権の隣に居住しているK一族の方と面談をいたしました。上記の処理方法の是非に関して意向を伺いました。何回かの面談を重ねた結果、出てきた回答は、「底地をある金額で一括で売却したい」「当該借地権を路線価価格の4分の1程度の金額で買い取る」という内容でした。当該借地権処理の依頼主であるO様は、路線価価格の4分の1程度の金額での売却に同意することはありえませんので、選択肢は必然的に底地の一括売却となります。地主側が指定した売却金額は路線価評価の1.3倍程度です。通常、底地を購入する業者の購入目線は、路線価評価額の2分の1程度から路線価評価額が一般的となります。このケースの場合には、2人の借地権者のうち1人が借地権の売却を希望しているため、一般的なケースよりも価格を伸ばせる可能性があると判断しました。

 問題は底地を購入した業者が、O様の借地権をいくらで購入するかです。O様には、路線価評価の半額以上での処理を目指すことを告げていました。そこでその条件を付加して、底地と借地権を購入する可能性がある会社を探しました。最終的には2社がその条件に同意し、上場企業であるS社が購入することになりました。O様の売却価格は、路線価評価の半額程度+建物解体費で、更地にして引き渡すことになります。O様とF様に売却を同意していただきました。

 お盆過ぎにF様、O様とS社が売買契約を締結し、土地の測量、建物の解体という流れが進んでいきました。建物内には60年以上の残置物が残っており、O様とお姉様のファミリー全員が休暇を利用して整理をし、3か月後に終了しました。そしてあっという間に年末が訪れ、無事に引き渡しを終えることができました。余談になりますが、S社からO様の口座への振込はネットバンクを利用して行い、O様もスマホで着金を確認できたため、ものの10数分で決済が完了しました。随分と便利な時代が到来したものだと感心いたしました。

 本事案はご相談から処理完了まで9か月を要しましたが、早い部類に入ります。借地権の処理は何年もの時間がかかることが珍しくありません。処理が早くできた理由は、地主に将来の後見人が存在していたことです。高齢地主の場合には、決断までにかなり時間を要することが一般的です。また、自分が生きている間には土地を手放したくないと考える地主も多く、その場合は借地権者の選択肢が狭まります。借地権者の皆様には、常に地主の動向に目を配り、できる限りのコミュニケーションを取られることをお勧めいたします。

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