再建築不可の戸建て住宅を収益物件に転換し、第三者に売却

時期】
令和5年10月
【分類】
所有権の売買
【場所】
都内K区
【内容】
 当方が相談を受けた空き家の概況は以下の通りです。
・場所:東京都内の京浜東北線の最寄り駅から徒歩10分程度の住宅街
・接道:幅80cmの通路(旧水路)を通って建築基準法上の道路まで10m以上の距離があ
  り、再建築不可の状態
・広さ:敷地面積が約31坪で、戸建て住宅の床面積は約30坪の4LDK
・建物の築年数:昭和52年築(築46年)
 当方の知り合いの不動産コンサルティング会社A社が、税理士から依頼を受け、当方に相談がありました。
すでに空き家になって3年以上が経過していました。従前の住人は、自治体に勤務していたキャリアウーマンで、子供がなく単身で暮らしていました。時々、兄弟の子供(甥)が顔を出してはいましたが、介護をする必要もなく、元気に暮らしていたそうです。
しかし、寄る年波(90代)に勝てず、やがて病院に入院することになり、そこで生涯を終えました。相続人は甥が3名です。それぞれが自宅を保有しており、空き家に居住する必要はありませんでした。また、リフォーム費用も相当の額を要すると思われ、賃貸に出すことも頭にありませんでした。
 当方はA社の代表と建築士を伴って現地を確認しました。故人は急いで入院したようで、日常生活の残置物がそのまま放置されていました。使用していたベッドは急な階段を上った2階にあり、南向きの部屋はとても暖かく、快適な環境で老後を過ごしていたことが想像されました。建物は注文住宅らしく、しっかりとした造りで雨もりやシロアリの痕跡もありませんでした。基準法上の道路に面していたら、買い手を見つけるのは難しくないと思われました。
 相続人3名のうち1名が中心になって、残置物の片付けを行っていたため、疲弊していました。3名とも空き家を保有し続ける意思はなく、売却する方針を決めていましたが、ある程度残置物の処理をしないと購入者を見つけることは困難です。
  前記しましたとおり、現在の所有者(相続人3名)は、売却を望んでいます。空き家は再建築不可のため、建物を壊して売却することはできず、現況のままの売却にせざるを得ません。通路を隔てた南側敷地には建物がなく、陽当たりと視界は良好です。とは言え、築年数が古いため、日本人の一般家族が居住できる状態にするためには、相当のリフォーム費用がかかります。購入する方(不動産会社を含めて)はリフォーム費用を差し引いた価格での購入を希望しますので、売買価格は限りなく0円に近付いていきます。
 そこで当方は、相続人が希望する価格で売却するには、空き家を賃貸して収益物件として第三者に売却するしか道はないと判断しました。しかも、リフォーム費用をなるべく抑えることが条件になります。
 そうこうしているとA社の知り合いで、外国人留学生の寮を運営している外国人が現れました。空き家は4LDKですが、各部屋に2段ベッドを複数設置して運用が可能との報告を受けました。リフォームもある程度、自分たちで行うとのことでした。
 渡りに船とはこのことです。建物に詳しい建築士が空き家を買い取りました。水回り等を補修して残置物を撤去した後に、予定通り留学生が居住し始めました。各部屋に2段ベッドを2基から3基設置し、家全体で20名程度が暮らすようになったのです。留学生は全員女性で、ゴミ出しや騒音等のトラブルもなく、故人が暮らしていた時と同様に、穏やかな生活が再開されています。故人が苦労して建てた家も壊されることなく、若い女性の住処に生まれ変わりました。故人の感情は知る由もありませんが、あの世から微笑んでいると想像いたします。
 その後、建築士は投資家に売却をしました。その投資家は40代の実業家で、中国語を操り国際的なビジネスを手掛けています。日本の再建築不可の空き家が、アジアの入居者と投資家によって生まれ変わった実例となりました。

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