地主との関係が良好でない借地権付きアパートを、第三者に譲渡することに成功

【時期】
令和6年7月
【分類】
借地権の売買
【場所】
千葉県某市
【内容】
 昨年末に親から相続した借地権付き建物を処分したいとの相談がありました。当方に寄せられる相談は、親が居住していた自宅を処分したいという内容が一般的ですが、今回はアパートでした。私鉄の最寄り駅から徒歩3分程度の至近距離にあり、築年数は34年(平成2年築)で、大手ハウスメーカーが施工した鉄骨造り2階建です。4室+駐車場3台で満室状態でした。外壁も頻繁に塗り替えているようで、メンテナンスが行き届いている感を受けました。建物の抵当権(借入金)もなく、どうして売却するのかが不思議でした。

 アパートが存在している土地の所有者は周辺の大地主の一族の一人で、相談者の父は不動産鑑定士として地主のアドバイスを行っていたようです。その関係で、アパートの周囲には地主が保有するアパートも複数存在していました。やがて、地主と借地権者とも相続が発生して代替わりとなりました。

 通常、代替わりをしますと親時代の関係とは異なって関係がぎくしゃくすることが多いですが、相談者の場合も同様でした。更新時に地主が要求する更新料を支払ったにもかかわらず、土地の賃貸借契約書が更新されなかったり、外壁塗装をする際も地主から承諾料を支払え、という要求があったそうです。こういうことが重なり、相談者は地主との関係を断ちたいといる理由でアパートの売却を決断しました。

 当方は地主との関係が良好でない場合に、第三者への譲渡承諾を得られないという経験を多々してきましたので、そのことを相談者に伝えました。また、借地権付建物は融資が困難であること、次の更新までの期間が短い(残り約6年)ことから、譲渡価格も所有権とは異なることも説明いたしました。話し合いの末、売却価格を地代差し引き後の表面利回り10%と設定し、流通機構に登録いたしました。3週間程度経過すると、地元に複数の収益物件を保有している法人の投資家が現れました。現金で購入するとのことで、願ったりかなったりの条件でした。

 次のプロセスは地主から譲渡承諾をいただくことです。前記しましたとおり、関係が良好ではないため、苦戦することが予想されました。当方は予め手を打っていました。地主は代理人として弁護士を指名していましたので、相談者から弁護士に手紙(当方が文案を作成)を投函し、譲渡承諾への理解を求めていました。当方から弁護士にメールを送信し、面談にこぎつけました。

 面談に応じた弁護士は強硬な態度ではなく、当方の説明をきちんと理解して、地主と協議をしていただきました。最大のポイントは譲渡承諾料でした。譲渡価格の10%が相場であり、当方はその旨を相談者に伝えていました。後日、弁護士から告げられた承諾料は相場を超えた譲渡価格の10.6%相当額でしたが、相談者は許容範囲と決断しました。

 後日、弁護士から譲渡承諾書をいただき、無事に決済、物件の引渡しをすることができました。関係が悪化している地主が譲渡承諾をした理由を弁護士に確認すると、「関係が悪い借地人から新たな借地人に代わってもらうことを、地主は望んでいるから」との回答でした。

 地主の代理人である弁護士が人格者であったことが本事案を処理できた要因でした。また本物件の購入者は借地権は初めてとのことで不安感を抱いていましたが、当方の説明を理解して購入を決断してくれたことも勝因でした。良い意味で想定外が重なり、譲渡に成功できた事案でした。

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