建物の名義者と賃貸借契約書記載の借主が異なるが、誰が相続人か

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通常は建物の名義人と土地賃貸借契約書記載の借主は同一ですが、まれに異なる場合があります。父親が借地人で、その息子さんが建物を建替えて建物の名義人になり、親と同居をしているケースなどが該当します。この場合は父親が借地権者で、息子さんが借地権を使用貸借している(無償で父親から借りている)ことになります。従って、父親に相続が発生した場合、借地権者を相続するのは父親の法定相続人ということになります。

仮に相続人が建物所有者である息子さんとその姉という場合には、遺産分割協議をして息子さんが借地権を相続することにすべきです。
しかし、父親に他に財産がない場合には、姉が借地権を息子さんと共有で相続したいと主張する可能性があります。共有にした場合、将来において共有者の姉に相続が発生すると、借地権は姉の配偶者や子供が相続する可能性があり、ややこしい状況が生じます。それを防ぐために、借地権の相続者は単独に、この場合で言えば息子さんが相続すべきです。姉には代償金を支払うことで同意していただくことになりますが、一括で支払えない場合には、分割で支払うことも可能です(ただし姉の同意が必要です)。

また、地主の立場に立つと、建物に居住していない者が借地権者として登場することを望ましく思いません。権利関係が明確でない場合には、建物を将来建替えるもしくは大規模修繕するに際して、地主の承諾を得られない可能性も出てきます。借地権を遺産分割協議する際は、その点も考慮に入れて、建物名義人と借地権者を一致させるように努めることをお勧めいたします。

当相談室に寄せられた相談として、建物名義人が4名で土地賃貸借契約書には4名のうちの2名が借主として記載されているという事例がありました。地代を支払っているのは土地賃貸借契約書記載の2名のうちの1名だけで、居住者もその1名の家族だけです。このような事態になったのは、父親の相続時に建物を複数名で登記したことが原因です。その後、建物名義人を土地賃貸借契約書の借主と一致させるために、建物の贈与を行いました。建物が老朽化しているために、贈与税の非課税枠の範囲内で贈与を行うことができました。

すると税務署から、借地権も贈与の対象ではないかとのお尋ねが届きました。借地権は移動していないことを証明するためには、地主が署名捺印をする欄のある「借地権者の地位に変更がない旨の届出書」を提出することを要望されました。昨今、税務署は不動産の権利移動に大変厳しく目を光らせています。特に親族間の権利移動はもっとも厳しくチェックされるようです。したがって、相続時は適当に処理をし、後から移動すれば良いという考えは通用しないと認識していただきたくお願いいたします。

借地権は登記ができず実態がわかりにくい財産ですが、相続税や贈与税の課税対象になる財産であり、扱いを誤ると多額の税金が課されることを認識しておくべきです。素人判断はケガのもとです。少しでもお悩みの方は当相談室をご利用されることをお勧めいたします。

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