借地権者の命運は地主しだい!?
3月末となりましたが、今年はまだ桜が咲きません。
本日の昼に千鳥ヶ淵を歩く機会がありました。
所定の位置に花見用のゴミ箱がスタンバイしており、あとは咲くのを待つだけの状態でした。今週末に開花するそうですが、はたして予定通りとなるでしょうか。
さて、最近借地権者から相談された事例で驚いたことがあります。
Aさんは都内某所で古くから土地を借りている借地権者です。
地主は近隣の宗教法人。
今まで、地代や更新料を遅滞なく支払ってきました。
Aさんは借地権以外にも他所で不動産を保有していました。
資金繰りが悪化し、その不動産が競売に出されてしまいました。
ところが結局、買い手がつかなかったため、債権者は借地権付建物を差し押さえして競売に出してしまったのです。
すると、地主である宗教法人の顧問弁護士は、いきなり内容証明書郵便で契約解除通知書を送りつけてきました。
弁護士は契約書内に記載されている下記の解除条項を根拠にしているのです。
「仮差押え、仮処分、強制執行、競売の申立てを受け、もしくは公租公課の滞納処分をうけた時」
驚いたAさんは地主に事情を説明し、契約解除の撤回を直訴しましたが、顧問弁護士に一任していると言われ、相手にされませんでした。
しかし、後日、地代を支払いに行くと、それは受け取り、競売の日にちが来るのを心待ちにしているといった様子だったそうです。
契約解除を通知していながら、地代を受け取るという矛盾した行為を行っていることに気付かないのです。
一般に、地主が宗教法人の場合には、個人が地主である場合と比較して安心できるというイメージがあります。
しかし、それもイメージだけでの話で、実情は異なります。
困った人を救済するのが宗教家のつとめと言われることもありますが、こと貸地に関する限り、宗教家も鬼になるのでしょうか。
これとは対照的な話を以前聞いたことがあります。
倉敷を訪れた時のことです。
ご存じのとおり、この町の景観はとても美しく、絶えず多くの観光客を集めています。
その人気の一端を担っているのは、地元の大地主である大原家です。
大原美術館やクラボウ、クラレといった大企業を設立したあの一族です。
町のボランティアガイドの方とお話しをする機会がありました。
その方は問われることなく、「自分は大原家が保有している土地の借地人であり、大原様には大変お世話になった。大原様は借地人の財政状態が悪くなると、資金の面倒を見てくれたりした。助けられた借地人は数多くいる。
あんなに良い地主は世界に二人といない。自分は生まれ変わってもまた大原家の借地人にないたい」と語りました。
所変われば品変わると言いますが、地主もさまざまです。
願わくば、良い地主にあたりたいと誰しも考えるでしょうが、こればかりは神のみぞ知る世界でしょうか。
Aさんの後日談は追ってお知らせいたします。